Mar.-Aug/2002
気密断熱性能について
2002年3月24日付で、三井ホームに提出した質問(こちら)に対する回答を4月22日付で頂きました。その回答に対する再度質問を4月30日および5月6日に提出しました。その内容および参考資料(抜粋)を記載します。三井ホームからのコメントは、今後、同社でマイホームを建築される方にとっては、必ずや参考になると考えますので、ここに掲載させていただきたいと思います。(三井ホームさん)あしからずご了承ください。
Q1.
建築確認通知書を確認してみました。拙宅は、基準金利適用住宅(省エネルギータイプ+耐久性タイプ)ということですので、基準金利適用住宅工事仕様書の部分を見てみると、V.5.3 防湿材の施工 の項に、「結露防止のために(断熱材の)室内側に必ず防湿剤を施工する。」… とありますが、拙宅ではそのような処置は施されておりません。この件についてのコメントをお願いいたします。4/22 公庫基準金利適応仕様書9−4−3−1に記載通り、防湿材を供えた耳付き防湿材、フェルト状断熱材(ロックウール55mm)を室内に向けて施工しております。 4/30 御社で採用されている断熱材「アムマット」は室内側のフィルム(商品名が印刷されている側)を防湿フィルムとしているということですが、施工がfineとはいえないと愚考いたしますがいかがでしょうか?「ロックウールをカットして施工された場合にはその切断面に防湿テープを施工していただくようお願いしております。すなわち、室内側に面するフィルムを連続させる(切れ目をなくす)ことが必要です。」と川鉄ロックファイバー株式会社のかたも言っておられますが、このような施工はされていないようです。こちらで、御社の断熱材の施工状況について記載しておりますのでご参照ください。arrow head の付いている画像は当方の公開しているホームページにおいて掲載している写真ですが、こちらについては、現場監督さんから「修正して写真を撮りました」とのことでしたが、当方はその写真を受け取っていませんので、修正はされていないものと理解しております。
この施工で、正しい施工と言えるでしょうか?5/24 〔資料〕 『川鉄ロックファイバー社からの回答書』 (クリックで見る) 防湿剤のフィルムの連続について
資料の川鉄ロックファイバー社からの回答書にも記載がありますように定尺の断熱材を使用する範囲内では連続が可能ですが、それ以外の、例えば柱〜柱の間隔が定尺巾の455mm以内である部位、或いは窓上のマグサ部分については防湿剤を連続させることはできません。「すべての部分に防湿剤を連続して施工する」との表現により誤解を招いておるやに思慮いたしております。(赤字:施主着色)
断熱材をカットして充填している
ご指摘の通り、連続の難しい定尺未満の箇所等には断熱材をカットして施工をしております。住宅金融公庫標準仕様書に準じた施工方法であり、これら共通仕様書等の文書においてもカットを禁止すると判断される記載は見当たらず「十分に突き付け施工する」となっております。またカットすることで断熱材の性能自体が低下することもほとんど考えにくいことと思慮いたします。
断熱材の修正について
当社の施工管理および各検査工程のなかで施工基準にのっとり、確認および必要な手当てを行うべきところ、先に施主からご指摘をいただく結果になりました事深くお詫びいたします。今後はかかる事の無きよう指導の徹底をしてまいる所存です。
5/26 結局御社は「拙宅の断熱材の施工に関してはまったく問題はない」とお考えだということですか? 6/6 現場施工においては、十分突き詰めて施工するように努めております。ただ、なにぶんにも現場での施工の為、ご指摘の通り若干の隙間が生じる場合も想定されますが、新省エネルギー基準に求められている断熱性能は十分に担保されていると思われます。念のため、断熱材の欠損率について1%(約2uは過大な想定数字ではありますが)欠損した想定でQ値を算出してみましたのでご参照下さい。結果は2.98W/u℃で新省エネルギー基準値の3.95W/u℃はもちろんのこと、以前算出したQ値2.96W/u℃とほぼ同じ値が出ております。従いまして「断熱材の施工に全く問題はないのか」とのご質問に関しましては、新省エネルギー基準での断熱性能に影響が出る状況ではないものと弊社といたしましては考えております。 6/12 もともと小生が、断熱材の施工についての問題を取り上げた理由は、予想以上に寒かったということもありますが、拙宅の建築に於いて、御社のとられた工法の場合、以前の工法に比して壁体内における室内外温度差が大きくなるため、以前の工法より壁体内結露が出やすい環境にさらされていないか?ということを心配しているからです。残念ながら拙宅は新省エネ基準により建築されたため、ベーパーバリアが施工されませんでした。そうなると、公庫仕様書にある防湿材(拙宅の場合はアムマットに付いてる耳付きの防湿材)に頼らざるを得ないわけでその防湿材の施工が、指摘しているようにロックウールが露出しまくった状態で大丈夫か?(防湿材としての機能が期待できるのか?)ということをお聞きしているのです。川鉄ロックファイバー社のコメントの中に「室内側から製品の正面を見てロックウールが過大に剥き出しになっている場合のみ、剥き出しになった部分を防湿テープ等で養生する」とあります。公庫仕様に準じているかどうかということを論ずるならばここにある「過大」の解釈が問題になるのだと思いますが(小生は十分過大だと思っております)、そういうことではなくて、プロのハウスメーカーとしての率直なご意見を伺いたいと存じます。 6/29
壁体内結露について
通気工法に関しては住宅性能表示の中で、劣化の軽減に関すること(劣化対策等級)および温熱環境に関すること(新省エネ対策等級)の2つの性能項目におきまして通気工法とすることが最高等級を得るための必須条件とされています。これは通気工法がそれぞれ以下に示す機能をもち、住宅の耐久性上、非常に有効な手段として一般的に認められています。【劣化の軽減(耐久性)】におきましては通気の機能として@雨がかりを防止する。(構造躯体と外装材とを遠ざけることで構造体に水が作用しにくくなる。事故的に水分が進入しても通気層部分が排水経路となる。)A通気層を通して室内の湿気を排出する。通気層は以上の機能を果たすと言われています。従いまして一般工法と比較すると通気工法のほうが壁体内結露に対しても有効といえます。
防湿材施工について
施工に関してのお答えは前回の回答書の通りです。ご心配をされている防湿材の隙間からの水分の侵入による壁体内結露につきましては、建物の耐久性が劣化するような状態になるには、壁体内の構造材および合板が含水率30%以上の水分を含んだ状態でかつ長期にわたった場合に始めて木を腐食させる菌が繁殖し、構造体が劣化することになります。しかしそれほどの水分が壁体内に侵入するには事故的に水分が侵入しない限り通常では考えられません。弊社のモデルハウス等を解体する際には全棟、詳細な追跡調査を行っておりますが、過去にそのようなケースはまったく見当たりません。ご心配は不要と思われます。
弊社といたしましては今後も誠心誠意をもって対応させていただきたく存じます。今後とも何卒ご高配の程宜しくお願い申し上げます。7/17
通気工法を採用した場合、従来の一般工法に比し、結露の可能性という面でも有利であること、
従来の工法によって施工されたモデルハウスを解体しても壁体内結露は認められたことがないということ、
により、通気工法により施工された拙宅においては壁体内結露の心配はないというように理解してよろしいのでしょうか?
だとすると、契約の中には、20年保証システムに「壁体内結露」の項は記載されておりませんでしたが、万が一、拙宅に於いて壁体内結露被害に遭遇した場合、20年保証の対象として修繕を保証していただけませんでしょうか?
もちろん故意に「換気量を減らしたり、室内外温度差を無理に上げて、壁体内結露を出しやすくする」ようなことはいたしません。先進の通気工法を使用した家が壁体内結露したなんてことになると、御社にとっても大きなデメリットになるでしょうし、それより何より当方がいちばん困ります。
以上、何卒御高配いただきますよう、宜しくお願い申し上げます。8/5
通常でのご使用において壁体内結露が発生し構造駆体が損傷を受けた場合には、当然のことですが、20年保証システム内の補償範囲とさせていただきます。
Q2.
そもそも、拙宅では設計段階ではまったく外壁の構造については施主側に、選択肢を与えられず、知らない間にPAW工法を採用されておりました。契約当初の段階では、外壁は「ラスPMモルタル+弾性アクリルリシン吹付」だったのが、最終的には「PAW工法用モルタル下地+弾性アクリルリシン吹付」に知らない間に変更されていました。この点についても、どのような経緯・必然性でそうなったのかということについてのコメントをお願いいたします。4/22 ご契約後、モルタル下地仕様が変更となり、PMモルタルからPAW工法もしくはBSW工法になりました。PAW工法のほうがクラック発生の可能性が低くPAW工法にて施工の旨を、設計士O氏・営業伊藤が詳細設計打合中(8月頃)に、口頭にて説明させて頂いております。
Q3.
拙宅竣工時期以降、◯▲地域で小生の把握する限りでは4棟の貴社の家が建ちましたが、通気工法を採用しておられる家は、ほとんどないようにお見受けいたします。これはいかなる理由によるのでしょう?4/22 現在、外壁モルタルの場合、PAW工法・BSW工法どちらかで施工されており、どちらを選択されるかはお客様により様々です。PAW工法も普通に施工されており、◯▲地域でこの一年施工がなかったのは偶然かと思われます。
Q4.
昨年10月に拙宅のQ値(計算値)を算出していただいたのですが、この計算の中で、換気回数n=0.5という数値が使われていたため、この値はどのようにして出すのか?と元現場監督の方に問うたところ、「計算を行う上で決められている数値です」とのご回答をいただきました。 その後の当方で得た情報によると、0.5という数値は、おそらく機械換気が正常に働いていると言う前提で0.5回/h ということだと思われます。しかし、C値(相当隙間面積)が例えば「5」とすると、自然換気分だけで 換気回数が0.5回増えます。 それに機械換気分を足すと、1回/h となり、明らかに過換気になります。 つまり、換気による熱損失が倍になるわけですが、そのようなことを加味しないと文字通り机上の計算で終わってしまうような気がするのですが、この件についての貴社のコメントをお願いいたします。4/22 Q4.につきましては、何カ所かの質問(又は説明を要する)箇所がありますので、当方にて区分をした上でご説明させていただきます。
お客様の断熱仕様は「次世代省エネ仕様」ではなく「新省エネ仕様」にてご契約されております。以下の説明は全てこれを前提に進めさせていただきます。
Q.4-1
換気回数n=0.5の根拠は?
A.4-1
平成4年2月28日付通産省・建設省告示第2号「住宅に係わるエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断の基準」(いわゆる「新省エネルギー基準」)により、地域区分別に熱損失係数の基準値と計算式が示されています。
〔資料ー@〕 『住宅の新省エネルギー基準と指針』 (クリックで見る) この中で、「枠組壁工法による住宅」については、計算に用いる自然換気回数「n」を「0.7回/h」とするように定められています。
前回(工事中)提出致しました「実質熱貫流率・熱損失係数計算シート」において、この箇所が「0.5回/h」と勘違いして設定し、計算を進められておりましたので、今回訂正致しました。又、床面積の箇所も、本来吹き抜け空間については、仮想の床上に2.1m以上の天井高が確保される部分については、上階にも床があるものとして床面積に参入する事ができるところを、法定床面積にて計算しておりました。ここも訂正致しました。
Q.4-2
「換気回数」の設定根拠は?
A.4-2
上記の通り、平成4年2月28日付通産省・建設省告示第2号「住宅に係わるエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断の基準」(いわゆる「新省エネルギー基準」)により、「枠組壁工法による住宅」については、熱損失係数の計算に用いる自然換気回数「n」を0.7回/hとするように定められています。そこで今回の計算では0.7回/hに修正致しました。
Q.4-3
機械換気分を足すと「1.0回/h」となり過換気になります・・・
A.4-3
あくまでQ値計算上、自然換気回数は、0.7回/hですが、実際には住宅の自然換気量=換気回数(n)は、建物内外の温度差と周囲の風速が大きく影響します。〔資料-A〕 『住宅の気密測定技能者養成講習テキスト』 (クリックで見る) この中で、内外の温度差が30度の場合は、「相当隙間面積」の10分の1の数値が「自然換気回数」とほぼ等しいと考えられます。しかし、資料の後半に記述されておりますように、内外の温度差が10度前後で、C値が5 cu/u の住宅では、自然換気回数が0.17回/hになり換気不足になる可能性もあります。さらに、温度差が小さくなれば自然換気回数はさらに小さくなります。
上記説明のように、換気回数を機械換気だけで0.5回/hとし、C値から自然換気に換算して0.5回/hとし、合計して1.0回/hと算出するのは、誤解と思われます。空気質環境の観点からは、換気を十分に採ることが非常に重要と考えます。4/30 Q-A.4
この中で、「前回のQ値の計算に誤りがあり、計算し直した」という記載がありますが、その結果についての記載がありません。訂正後の計算結果について教えていただけないでしょうか?5/24 回答なし 5/26 当初の拙宅のQ値計算が間違っており計算し直したとのことですが、その計算式および計算結果のご呈示をお願いいたします。 5/6 Q-A.4
新省エネ基準の中の自然換気回数「n」というのは、あくまで、建設省の指針としての数値であって、おそらく実験的および理論的根拠に基づいて、これくらいが妥当だろうと定められた値ということでしょう。計算式から考えると、この「n」というのは、強制換気と、自然換気(開口部、隙間よりの換気・・・以下区別のため隙間風と記載します)を合わせたもので、気密住宅であれば隙間風が少ないために、建設省の設定する「n」の値も下がるということですよね。ここで、気密住宅というのはC値が5以下をみたすものであれば、n=0.5と定めれば、机上の計算値であるQ値も、実測値とさほど違わないだろうといったレベルでの話ですよね。
新省エネ基準で建てたから「n=0.7」、次世代省エネ基準で建てたから「n=0.5」を使用するというのは、あくまで建設省マニュアルによる便宜上の話で、実際には、どんな基準で建てたかにかかわらず、戸別にC値は測定できて、その値からより実際値に近いQ値も計算できるはずです。そして、その結果、「新省エネ基準で建てたが、結果的には次世代省エネ基準をクリアしていた」ということもあり得る話だと思います。逆もまた然り・・・ですけど。
拙宅における場合、建設省の定めた…云々を抜きにして、実際はどうかということを考えてみました。誤りがあればご指摘いただけると幸いです。
なお、内外気温差は10度とし、簡単のため、トイレ・浴室・キッチンの換気扇はいっさい使用しないものとします。
貫流による熱損失合計をA、換気による熱損失合計をB、延床面積をSとすると、
Q値=(A+B)/ S
となります。Aについては、素人には難しいので、御社の計算値389.50W/℃を使います。Bについては、「n」が決まれば、これに建物容積と比熱を乗算すると出ます。
それでは「n」を算出してみましょう。
「n」=機械換気による換気回数+隙間風による換気回数
まず、機械換気による換気量は、拙宅の換気扇はナショナルパイプファン(FY-12PTK6VD)は通常運転で70m3/hの換気を行うので、それが2台で140m3/hの換気を行います。建物容積が468m3なので、機械換気で0.299回/hの換気が行われます。さらに、C値が、2.52 cu/uですから、御社の資料によると、この場合はおよそ0.085回/hの隙間風による換気が行われます。
ということで、「n」=0.299+0.085=0.384という数字が出てきます。これに上述の乗算をすると、
B= 62.9
したがってQ=(389.5+62.9)/170=2.66
という結果になりますが、いかがでしょうか?
(これは、あくまで机上の話で、断熱材、窓サッシ等が正しく施工されていればの話ですけど・・・)
ところで、拙宅は「新省エネルギー基準」で建築されましたが、C値の実測値は、築1年経った時点で2.52 cu/u でした。それでもやはり「n」は、国の定めた指針にのっとって0.7で計算するのでしょうか?
5/24 先ず、「省エネルギー基準数値」は公式から導き出された物ではなく、エネルギーに関する国策から打ち出されたものでありますことをご理解頂ければと存じます。つまり「算定式」により設計性能を確認する上で、「n=0.7」をQ値を求める為の前提条件として定めているものであり、実測値をもとにしたものではない点をご理解いただければと存じます。
Q5.
当方では、近々、C値を測定していただくこととなっておりますが、当方と同様の構造の場合(PAW工法とベーパーバリア無しの組み合わせ)、妥当な施工がされたとして、C値はどれくらいの値が期待できるのでしょう?そのような実験的データをお持ちでしたらお教え願えませんでしょうか?4/22 ご質問の条件での計測データは、申し訳ありませんが、当社にはございません。気密測定結果は、開口部にどのようなサッシを用いているのか、玄関・勝手口のドアの種類等々、又、建物のプラン等にもよって異なる原因がありますので、一概に示すことはできかねます。そのうえで、参考数値として、過去の測定結果では、C値が3〜7cu/u前後の値となっております。
三井ホームおよび関係者の方々へ (2002年5月8日)
今回のことで、拙宅の現場監督をしていただいた福田氏および営業の伊藤氏に、ご迷惑をおかけしているかも知れないことを深くお詫びいたします。断熱材修正の写真の件についても、写真は確かに頂いておりませんが、写真をいただいていても結果は同じ事です。ここではっきりしておきたいのは、「私は、伊藤・福田両氏にはいろいろと無理なことも言ったかも知れませんが、可及的にご尽力いただき、本当に感謝しております。」ということです。営業さんや現場監督さんの個人的な問題ではありません。
問題は、そのような施工を日常的に行っている企業としての体質だと考えます。他の方の公開しているホームページを見ても、断熱材をカットして充填することは日常に行われていることと理解しております。おそらく拙宅を建ててくれた(今はなき)工務店も別に手を抜こうとして施工したわけではないでしょう(時間的には非常にきびしかったようですが・・・しかしこれもまた企業の問題と考えます)。監督さんの“監督するよりどころ”はやはり企業としての社内教育でありこれもまた企業の問題だと考えます。個々の住宅建築に関わる営業・現場監督は一人ずつですが、その結果としてできた住宅の品質に関しては、「大きな信頼 三井ホーム」として最後まで責任を持っていただきたいと切に願っております。個人に対して責任を押しつけるのではなく、企業として、万人が納得できるようなご返答がいただけることを切に希望する次第であります。